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11月は「過重労働解消キャンペーン」。島根労働局の監督結果から見る、確認しておきたいこと

執筆者の写真: NANGO
NANGO
10月23日
読了時間: 7分

更新日:5 日前

11月は「過重労働解消キャンペーン」。島根労働局の監督結果から見る、確認しておきたいこと

11月は「過労死等防止啓発月間」です。厚生労働省は、この11月に、全国の労働局・労働基準監督署を通じて「過重労働解消キャンペーン」を実施します(11月1日から30日)。

目的は、長時間労働の是正や健康障害の防止を進め、過労死等をなくしていくことです。啓発のほか、長時間労働が疑われる事業場などへの重点的な監督指導も行われます。

島根労働局は10月19日、2025年度の監督指導の結果を公表し、11月のキャンペーン期間中に、重点的な監督指導を行うとしています。

この記事では、その結果と、過去に公表された指導の事例を材料にして、「自分の店では、どこを確認しておけばよいか」を整理します。


島根労働局が公表した結果

2025年度、島根県内の4つの労働基準監督署が、長時間労働が疑われる285事業場に、監督指導を行いました。そのうち81事業場(約3割)で、違法な時間外労働が確認されています。

残業時間そのもののほか、賃金不払残業、労働時間の把握、健康障害の防止措置についても、是正や改善の指導が行われています。

数字の内訳より、この記事で見たいのは、どんな点が確認され、どう改善されたのかです。


「36協定を出しているから大丈夫」ではない

残業について、まず前提の確認です。

労働時間は、原則として1日8時間・週40時間までです。これを超えて働かせるためには、会社と従業員の代表が「36協定」という書面を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定を結んでいれば、どれだけでも働かせていいわけではありません。法律で上限が決まっています。

【時間外労働の上限(原則)】

・1か月45時間まで・1年360時間まで

【どうしても超える必要があるとき(特別条項)】

・1年720時間以内・単月100時間未満(休日労働を含む)・2〜6か月の平均80時間以内(休日労働を含む)・月45時間を超えられるのは、年6か月まで

この上限を超えると、36協定を届け出ていても、違法になります。

もう一つ、見落としやすい点があります。

36協定の起算日と、給与の締日が違う会社は、意外とあります。たとえば、36協定は4月1日起算で1年を数えるのに、給与は毎月20日締め、という形です。

この場合、給与明細の残業時間を12か月足しても、36協定の年720時間と一致しません。給与計算と、36協定の上限管理は、別々に数える必要があります。


事例から、自分の店に置き換えて確認する

島根労働局が過去に公表した事例から、2つ取り上げます。指導を受けた内容は、そのまま、自分の店で先に確認しておくヒントになります。


【事例① 労働時間の記録が、実態と食い違っていた】

【何があったか】

労働時間を自己申告で管理していたところ、賃金計算の基礎になる記録と、タイムカードに食い違いがあり、一部の従業員の割増賃金が不足していました。

【指導された内容】

・労働時間を適正に把握する、具体的な方法を定めること・過去の労働時間について、従業員への聞き取りなどで、実態を調べること

【その後の改善】

過去にさかのぼって割増賃金を支払い、従業員と管理者が労働時間を確認する仕組みに変えました。

【飲食店に置き換えると】

タイムカードを押したあとも作業が続いている。こうした運用では、シフト表や自己申告だけで、実際の労働時間は分かりません。

【確認してみること】

□ シフト表の終了時刻と、実際の退勤時刻は、合っているか□ 閉店後のレジ締め、清掃、仕込みの時間は、労働時間として記録されているか□ タイムカードを押したあとに、作業をしていないか□ 自己申告の時間と、タイムカードや賃金計算の記録に、食い違いはないか□ 食い違いがあったとき、誰がどう確認するか、決まっているか

賃金を払ったかどうかだけでなく、会社が労働時間をどう把握していたかが、見られる点です。


【事例② 36協定を出していたのに、協定の時間を超えていた】

【何があったか】

特別条項付きの36協定を届け出ていましたが、協定で定めた特別延長時間を超える時間外労働が確認されました。

【指導された内容】

時間外・休日労働を減らすための、具体的な方法を考えて、改善すること。

【その後の改善】

人員を増やし、作業量を均等にしたことで、労働時間が減りました。

【飲食店に置き換えると】

「特定の人にシフトが集中する」。こうした状態では、36協定を届け出ていても、実際の働き方が、協定や法定の上限を超える可能性があります。

【確認してみること】

□ 一番長く働いている人の、直近の時間外・休日労働は、何時間か□ その時間は、36協定の範囲内で、法定の上限も超えていないか□ 開店準備から閉店後まで、同じ人が担当していないか□ 長く働く人の仕事のうち、ほかの人に分けられる部分はないか

問題が見つかったときに必要になるのは、36協定を書き直すことだけではありません。人員配置、シフト、業務分担、営業時間、管理方法など、長時間労働を生んでいる原因まで見直すことになります。


9月から、監督の見方が変わっている

厚生労働省は8月19日、時間外労働等に関する監督指導の見直しを公表し、9月1日から運用を変えています。

時間外・休日労働の時間数だけに着目して、月45時間以内への削減を一律に求める指導は見直されました。代わりに、36協定で定めた「健康・福祉を確保するための措置」の実施状況を、重点的に確認することになっています。

「健康・福祉を確保するための措置」は、長時間労働が続く従業員の健康を守るために、会社が決めて実施するものです。36協定の特別条項を使う場合、どんな措置を取るかを、協定書に書くことになっています。

具体的には、次のようなものです。


・勤務間インターバル(終業から次の始業まで一定時間を空ける)

・医師による面接指導・年次有給休暇を取れるようにする配慮

・心と体の相談窓口の設置など


時間外労働の上限規制が、緩和されたわけではありません。法定の上限を超えれば、これまでどおり問題になります。重大・悪質な事案には厳正に対応し、健康障害のおそれが高い場合は、引き続き必要な指導が行われます。

変わったのは、残業時間だけを見るのではなく、36協定で決めた健康・福祉確保措置を実際に行っているかも、重点的に確認する方向になったことです。

【確認してみること】


□ 36協定の特別条項に、どんな健康・福祉確保措置を書いているか

□ 書いたとおりに、対象になる人に実施しているか

□ 実施した記録は残っているか

□ 月80時間を超えた労働者に、その時間数を知らせているか


なお、36協定や特別条項の締結について、全国の働き方改革推進支援センターに、専門の相談窓口が設けられています。


何をどこまで見ておくか

長時間労働の確認は、1つではありません。4つに分かれます。


・36協定や法定の上限を超えて、働かせていないか

・その労働時間を、会社が正しく把握しているか

・実際に働いた時間に、割増賃金を正しく払っているか

・長時間労働の人に、必要な健康確保措置をしているか


どれか1つだけ確認すればよいわけではありません。残業代をすべて払っていても、法定の上限を超えて働かせることはできません。36協定の範囲内でも、勤怠記録が実態と違えば、労働時間の把握という別の問題になります。

キャンペーンの目的は、長時間労働を減らし、健康障害を防ぐことです。11月の重点期間は、監督指導が行われる期間であると同時に、自分の店の勤怠と健康確保措置を、記録から確かめ直す期間でもあります。


■参考資料

・厚生労働省「過重労働解消キャンペーン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign_00004.html

・島根労働局「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果を公表します」(2026年10月19日)https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/kantoku_261019ss.html

・島根労働局「平成29年の島根労働局における監督指導実施状況等について」(2018年6月28日)https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/002022472.pdf

・厚生労働省「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」(2026年8月19日)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75454.html

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