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2026年10月1日、ビール系飲料の酒税が一本化

執筆者の写真: NANGO
NANGO
10月17日
読了時間: 8分

更新日:3 日前

2026年10月1日、ビール系飲料の酒税が一本化されました。

これまで、ビール、発泡酒、新ジャンル(かつての第3のビール)では、それぞれ異なる酒税がかけられていました。

今回の改正によって、350ml当たりの酒税は54.25円に統一されました。

ビールは減税、発泡酒と新ジャンルは増税です。

この変更によって、長く続いてきた「ビールは高く、発泡酒や第3のビールは安い」という価格構造が変わります。

そして、変わっているのは価格だけではありません。サントリーの「金麦」をはじめ、これまで新ジャンルとして販売されてきた商品が、相次いでビールへと変わっています。


税率は、どう変わったのか

2026年10月1日の改正によって、350ml当たりの酒税は次のように変わりました。

  • ビール:63.35円 → 54.25円(9.10円の減税)

  • 発泡酒(麦芽比率25%未満):46.99円 → 54.25円(7.26円の増税)

  • 新ジャンル(かつての第3のビール):46.99円 → 54.25円(7.26円の増税)

いずれも54.25円に揃いました。

つまり、「発泡酒だから酒税が安い」「第3のビールだから税負担を抑えられる」という構造は、10月からなくなったことになります。

今回の一本化は、突然決まったものではありません。

2017年度の税制改正で決まり、2020年、2023年、2026年の3段階で進められてきました。


6年間で、税率はどう動いたのか

2020年9月までの酒税は、ビールが77円、発泡酒(麦芽比率25%未満)が46.99円、新ジャンルが28円でした。

その後の推移を350ml当たりで並べると、次のようになります。

種類

2020年9月まで

2020年10月

2023年10月

2026年10月

ビール

77円

70円

63.35円

54.25円

発泡酒(麦芽比率25%未満)

46.99円

46.99円

46.99円

54.25円

新ジャンル

28円

37.80円

46.99円

54.25円

ビールは段階的に減税され、新ジャンルは段階的に増税されました。

一方で、発泡酒(麦芽比率25%未満)だけは、2020年と2023年の改正では税率が据え置かれていました。

そのため、今回の2026年10月の改正によって、ビールがさらに減税される一方、発泡酒と新ジャンルは同じ7.26円の増税となりました。

なお、新ジャンルは2023年10月から酒税法上の「発泡酒」に統合されていますが、ここでは従来の商品区分に沿って表記しています。

財務省は、今回の酒税見直しの理由の一つとして、類似する酒類の税率差が、商品開発や販売数量に影響していたことを挙げています。

実際、これまでの酒税の違いは、商品の価格や売れ方にも影響してきました。


酒税の変更は、小売価格にも表れていた

過去の酒税改正では、店頭価格にも変化が見られました。

総務省統計局の小売物価統計調査によると、東京都区部の350ml換算平均価格は、2020年10月の改正前後で次のように動いています。

2020年10月の改正

  • ビール:196.5円 → 188.2円

  • 新ジャンル:110.5円 → 122.3円

ビールは8.3円下がり、新ジャンルは11.8円上がりました。

2023年10月の改正

  • ビール:196.3円 → 188.0円

  • 新ジャンル:129.8円 → 145.7円

このときも、ビールは8.3円下がり、新ジャンルは15.9円上がっています。

一方、税率が据え置かれた発泡酒については、2020年の小売価格に大きな変動は見られませんでした。

酒税が下がれば、その分だけ必ず小売価格が下がるわけではありません。原材料費や物流費、メーカーや販売店の価格設定なども影響します。

それでも、2020年と2023年の改正では、ビールの減税と新ジャンルの増税が、実際の小売価格にも表れていたことが分かります。


売れ方も変わってきた

もともと、ビール系飲料の市場では、ビール、発泡酒、新ジャンルがそれぞれ異なる価格帯を形成していました。

2019年のビール大手4社の販売実績では、ビールが5割弱、新ジャンルが4割超、残る1割ほどが発泡酒でした。

ところが、2020年の上半期には、初めて新ジャンルの出荷量がビールを上回っています。

この時期は新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店向けのビール需要が落ち込み、家庭で飲む新ジャンルの需要が伸びた時期でもありました。

その後、2020年と2023年の酒税改正を経て、ビールの構成比は再び高まっています。

アサヒビールによると、ビール類の販売数量に占めるビールの比率は、2025年には57%まで上昇しています。

価格差が縮まる中で、消費者の選択にも変化が生じていると考えられます。

そして、2026年10月の一本化によって、メーカーの商品戦略にも大きな変化が表れました。


金麦は、なぜビールになったのか

サントリーの「金麦」は、従来の新ジャンル製法(発泡酒②)からビール製法へ変更されました。

麦芽比率を従来の50%未満から50%以上に高めるなど、原材料や製法を変更し、酒税法上も「ビール」になっています。

新しい金麦は、2026年10月6日に発売されました。

ここで注目したいのが、今回の酒税改正との関係です。

従来の新ジャンルのままであれば、10月から350ml当たり7.26円の増税になります。

しかし、ビールになっても酒税は54.25円で同じです。

税率が同じなのであれば、税金を安くするために「ビールではない商品」をつくる理由はなくなります。

サントリーは、ビール化した金麦について、酒税改正による増税分のみを反映し、出荷価格は従来の新ジャンルの価格帯を維持すると説明しています。

つまり、価格帯を大きく変えることなく、酒税法上の「ビール」として販売する戦略です。

サントリーは、新しい金麦によって「デイリービール」の市場をつくると説明しています。

これまでの金麦は、税率の低い新ジャンルとして、手頃な価格でビールに近い味わいを楽しめる商品でした。

しかし、税率が一本化されたことで、同じような価格帯でビールを提供することが可能になりました。

「安い税率を使ってビール風の商品をつくる」競争から、「同じ酒税なら低価格のビールをつくる」競争へ。

商品づくりの前提が、反転した形です。

もちろん、従来の金麦の軽さや飲み口が好きだった人にとっては、「ビールになった=必ず良くなった」とは限りません。

麦芽比率や原材料、製法が変われば、味も変わります。

新しい金麦が支持されるかどうかは、ビールという名称だけでなく、実際の味や価格によって決まります。


本麒麟やクリアアサヒもビールへ

動いているのは金麦だけではありません。

キリンビールの「本麒麟」は、2026年11月4日から、新ジャンルから麦100%の生ビールへ変更される予定です。

アサヒビールも、従来の新ジャンル「クリアアサヒ」をビール化し、10月27日に「クリア アサヒ〈生〉」として発売しました。

いずれも、長く新ジャンルとして販売してきたブランドです。

これまで積み上げてきたブランドの知名度を生かしながら、商品そのものをビールへ変えています。

酒税の一本化は、単なる税率の変更にとどまらず、メーカーが長年続けてきた商品区分の見直しにもつながっています。


ビールのほうが高級品

「ビールのほうが上で、発泡酒や第3のビールは手頃な代替品」

こうしたイメージは、長く根づいてきました。

実際、ビールと発泡酒・新ジャンルでは、消費者が選ぶ理由にも違いがあります。

ビール酒造組合などが2026年に実施した調査では、ビールを飲む理由として最も多かったのが、**「おいしいから」76.7%**でした。

一方、発泡酒・新ジャンルを飲む理由として最も多かったのは、「価格が手ごろだから」64.1%です。

ビールは味、発泡酒や新ジャンルは価格。

消費者の意識にも、その違いが表れています。

しかし、ここで考えたいのは、そもそもビールが高かった理由の大きな部分を、酒税の違いが占めていたことです。

2020年9月時点の東京都区部の350ml換算平均価格を見てみます。


  • ビール:196.5円

  • 新ジャンル:110.5円

  • 価格差:約86円


これに対して、当時の酒税は次のとおりでした。


  • ビール:77円

  • 新ジャンル:28円

  • 酒税の差:49円


消費税を含めると、酒税の差による価格への影響は約54円になります。

つまり、ビールと新ジャンルの価格差約86円のうち、半分以上が税金の違いによるものだったということです。

発泡酒とビールの間でも、当時の酒税差は約30円、消費税を含めると約33円ありました。

ビールと発泡酒・新ジャンルの価格差は、原材料や製法、品質だけで生まれていたわけではありません。

税率の違いが、商品の価格帯を分ける大きな要因になっていたのです。

その税率差が、2026年10月1日からなくなりました。

もちろん、酒税が同じになったからといって、小売価格まで同じになるわけではありません。

原材料費や製法、メーカーの価格設定、ブランドの位置づけなどによって、価格差は残ります。

サントリーも、酒税一本化後もビールと従来の新ジャンルの価格帯には一定の差が残ると見込んでいます。

ただし、その差は、以前のように酒税の違いによって生まれるものではなくなります。


酒税が同じになって、何が変わるのか

これまでのビール系飲料は、酒税の違いを前提として、ビール、発泡酒、新ジャンルという市場が形成されてきました。

ビールより安い税率を使うために原材料や製法を工夫し、ビールに近い味わいの商品を開発することにも意味がありました。

しかし、2026年10月から、その税率差はなくなりました。

金麦、本麒麟、クリアアサヒが相次いでビール化しているのは、その変化を象徴しています。

一方で、従来の発泡酒や新ジャンルには、それぞれの味や飲み口を好んで選んできた消費者もいます。

税率が同じになったからといって、すべての商品がビールになるわけでも、消費者が必ずビールへ移るわけでもありません。

ただ、メーカーが商品を開発する際の前提は大きく変わりました。

税率の違いで価格帯を分けていた時代から、同じ税率のもとで、味や品質、価格、ブランドの魅力を競う時代へ。

ビールと発泡酒の酒税一本化は、350ml当たり数円の増減にとどまらない、ビール系飲料市場の転換点といえます。


参考資料・出典

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