2028年、雇用保険は週10時間から加入へ。社会保険はどう変わる?今後の制度改正を整理

更新日:6 日前
2年後の2028年10月1日から、雇用保険の加入対象が大きく広がります。
現在は原則として週20時間以上働く人が対象ですが、改正後は週10時間以上働く人も対象になります。
例えば、週2日、1日6時間働くパートやアルバイト。これまでは雇用保険の対象外となる働き方でしたが、2028年10月からは、ほかの条件を満たせば加入対象となります。
一方、健康保険・厚生年金保険も、別の法律改正によって段階的に加入対象が拡大されています。
さらに、19歳以上23歳未満の家族(配偶者を除く)については、健康保険の扶養に入れる年収基準が130万円未満から150万円未満に引き上げられました。
このように、雇用保険、健康保険・厚生年金、家族の扶養について、それぞれ制度の見直しが進んでいます。しかし、改正される時期も、対象となる人も同じではありません。
特に社会保険の適用拡大は、企業の規模によって対象となる時期が異なります。自分の会社ではいつから変わるのか、パートやアルバイトの働き方にはどう影響するのか、分かりにくいところもあると思います。
今回は、2028年10月の雇用保険適用拡大を出発点に、すでに始まっている改正から今後予定されている改正まで、いつ、どのような働き方や企業が対象になるのかを整理していきます。
1.まずは2025年から2035年までの改正スケジュール
雇用保険と社会保険では、改正される時期も仕組みも異なります。
まずは、全体の流れを見てみましょう。
時期 | 制度改正 |
2025年10月 | 健康保険の19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の扶養年収基準を150万円未満に引上げ |
2026年10月 | 社会保険の月額8.8万円の賃金要件を撤廃 |
2027年10月 | 社会保険の短時間労働者の対象企業を36人以上に拡大 |
2028年10月 | 雇用保険の加入要件を週10時間以上に拡大 |
2029年10月 | 社会保険の短時間労働者の対象企業を21人以上に拡大 |
2029年10月 | 常時5人以上を使用する個人事業所の適用対象業種を拡大(既存事業所には経過措置あり) |
2032年10月 | 社会保険の短時間労働者の対象企業を11人以上に拡大 |
2035年10月 | 社会保険の短時間労働者に係る企業規模要件を撤廃 |
このように、2028年の雇用保険改正だけでなく、前後の年にも社会保険に関する改正が予定されています。
特に、健康保険・厚生年金では、会社の規模によって短時間労働者が加入対象になる時期が異なります。
2.2028年10月、雇用保険は週10時間以上に
2024年5月に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第26号)によって、雇用保険の適用対象を拡大することが決まりました。
施行日は2028年10月1日です。
現在の週所定労働時間20時間以上という要件が、週10時間以上に変更されます。
Q.週10時間以上働けば、誰でも雇用保険に加入するのですか?
週10時間以上という条件のほかに、31日以上の雇用見込みが必要です。
また、昼間学生は原則として対象外ですが、一部例外があります。
加入は原則として雇用契約などで定められた週所定労働時間で判断します。
企業規模による制限はないため、小規模な飲食店なども対象です。
Q.新たに加入する人も失業給付などを受けられるのですか?
はい。新たに加入する短時間労働者にも、基本的には従来と同じ雇用保険制度が適用されます。
一定の要件を満たせば、失業時の基本手当や育児休業給付などの対象になります。
3.では、健康保険・厚生年金も週10時間になるのか
ここが混同しやすいところです。
2028年10月以降も、健康保険・厚生年金の短時間労働者の加入要件は、原則として週20時間以上のままです。
雇用保険と同じ週10時間以上に変更されるわけではありません。
ただし、社会保険についても、2025年に成立した年金制度改正法によって、別の適用拡大が進んでいます。
大きく変わるのは、「賃金要件」と「企業規模要件」の2つです。
Q.よく聞く「年収106万円の壁」はどうなったのですか?
これまで、一定規模以上の企業で働く短時間労働者には、週20時間以上のほかに、月額8万8,000円以上(年収換算で約106万円)という賃金要件がありました。
この賃金要件は、2026年10月1日に撤廃されました。
そのため、今後は年収106万円という金額ではなく、週所定労働時間や企業規模などによって加入を判断することになります。
なお、学生の適用除外など、その他の条件は引き続き残ります。
4.社会保険の企業規模要件は段階的に撤廃
2025年の年金制度改正では、短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業規模も、段階的に引き下げられます。
企業規模ごとに、短時間労働者への適用拡大が始まる時期を整理すると、次のようになります。
企業規模 | 適用開始時期 |
51人以上 | すでに適用済み |
36~50人 | 2027年10月から |
21~35人 | 2029年10月から |
11~20人 | 2032年10月から |
10人以下 | 2035年10月から |
つまり、2028年10月の雇用保険改正時点では、原則として36人以上の企業が社会保険の短時間労働者への適用拡大の対象となります。
その後も段階的に対象が広がり、2035年10月には企業規模による制限がなくなります。
なお、この表は、社会保険の適用事業所で働く短時間労働者について、企業規模による加入条件が変わる時期を示したものです。
Q.この企業規模は、パートやアルバイトも含めた人数ですか?
すべてのパートやアルバイトを単純に合計するわけではありません。
原則として、厚生年金保険の加入対象となっているフルタイムの従業員と、通常の労働者の所定労働時間・日数の4分の3以上働く従業員を数えます。
また、法人の場合は店舗ごとではなく、同じ法人に属する事業所の人数を合計して判断します。
なお、正社員や4分の3以上働く人の社会保険加入は、この企業規模要件とは別に判断されます。
5.2028年10月、雇用保険と社会保険の加入対象はどう違う?
ここまでの改正を整理すると、2028年10月時点では、雇用保険は週10時間以上、健康保険・厚生年金は短時間労働者について原則週20時間以上という違いがあります。
そのため、雇用保険には加入しても、健康保険・厚生年金には加入しない人が出てきます。
Q.同じ会社でも、働く時間によって加入する保険が違うのですか?
はい。例えば、通常の労働者が週40時間働く、社会保険の適用拡大の対象となる会社を考えてみましょう。
週15時間働くパートは、ほかの条件を満たせば雇用保険に加入しますが、原則として健康保険・厚生年金には加入しません。
一方、同じ会社で週22時間働くパートは、学生区分などの条件も満たせば、雇用保険と健康保険・厚生年金の両方に加入することになります。
このように、雇用保険と健康保険・厚生年金では加入条件が異なるため、それぞれ分けて考える必要があります。
6.健康保険の扶養基準は「130万円」から「150万円」へ
社会保険の適用拡大とは別に、家族の健康保険の扶養に入れる年収基準も見直されています。
2025年10月1日から、19歳以上23歳未満の家族(配偶者を除く)について、年間収入の基準が130万円未満から150万円未満に引き上げられました。
なお、それ以外の人については、原則として130万円未満という基準が引き続き適用されます(60歳以上や一定の障害がある方は180万円未満)。
Q.150万円の基準は大学生だけが対象ですか?
いいえ。学生かどうかではなく、年齢によって判断します。
19歳以上23歳未満であれば、学生以外でも対象になります。ただし、配偶者は除かれます。
年齢は、その年の12月31日時点で判定します。
Q.年収150万円未満なら、勤務先の社会保険に加入しなくてもよいのですか?
いいえ。150万円という基準は、家族の健康保険の扶養に入れるかどうかを判断するためのものです。
本人が勤務先の健康保険・厚生年金の加入条件を満たしていれば、年収150万円未満でも加入することになります。
また、家族の扶養に入れるかどうかも、年収だけでなく、生計維持関係などの条件を満たす必要があります。
なお、健康保険の扶養と、税法上の扶養、配偶者に関係する国民年金の第3号被保険者は、それぞれ別の制度です。
7.飲食店・ホテルでは何が変わる?
飲食店では、ランチやディナーなど限られた時間帯に働くパート・アルバイトも多く、2028年の雇用保険適用拡大によって、新たに加入対象となる人が出てくると考えられます。
一方、ホテルの宴会サービスなどでは、配ぜん会を通じてスタッフを確保することも多くあります。この場合、スタッフがどの事業主に雇用されているのかによって、雇用保険の加入手続きを行う事業主が異なります。
また、健康保険・厚生年金については、企業規模によって適用拡大の時期が異なります。
同じ飲食・宿泊業でも、個人経営の店舗、複数店舗を運営する法人、外部のスタッフを活用するホテルでは、改正による影響の現れ方が違ってきます。
個人経営の飲食店にも、2029年に別の改正
もう一つ、飲食店の経営者に関係するのが、個人事業所に対する社会保険の適用拡大です。
現在、個人経営の飲食店や旅館などは、従業員が常時5人以上いても、原則として健康保険・厚生年金の強制適用事業所にはなりません。
しかし、2029年10月からは、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所について、業種による制限が撤廃されます。
ただし、2029年10月の施行時点ですでに存在している飲食店などの個人事業所には、当分の間、従来の取扱いが続く経過措置があります。
そのため、今回の改正は、主に2029年10月以降に新しく開業する個人事業所に関係してきます。
これは、前述した短時間労働者の企業規模要件とは別の、事業所そのものの社会保険適用を広げる改正です。
このように、法人か個人事業所かによっても、制度改正の影響は異なります。
今すぐ具体的な手続きを進めるというよりも、まずは自社の雇用形態や従業員の働き方を踏まえて、どの改正がいつ関係してくるのかを把握しておきたいところです。
8.まとめ:自分に関係する改正は、いつから?
雇用保険は2028年10月から週10時間以上へ。健康保険・厚生年金は週20時間以上を基本に、企業規模による加入対象が段階的に広がっていきます。
また、家族の健康保険の扶養については、19歳以上23歳未満の年収基準がすでに150万円未満に引き上げられています。
さらに、2029年10月からは、個人事業所の社会保険の適用対象も広がります。
このように、適用拡大といっても制度によって対象者や改正時期は異なります。
企業の規模や従業員の働き方、法人か個人事業所かによっても、改正の影響が現れる時期は変わります。
今後の制度改正を見据えながら、自社や自分の働き方にどの改正が関係するのか、まずは全体の流れを把握しておきたいところです。
参考資料・関連リンク
日本年金機構|年齢要件はいつの時点で判定するのですか
厚生労働省|19歳以上23歳未満の被扶養者に係る認定に関するQ&A
※本記事は2026年10月26日時点で成立・施行が確認できる制度に基づいています。今後の法改正や政省令、行政運用の変更により、取扱いが変わる可能性があります。
法改正の施行時期、企業規模別の適用時期、個人事業所の経過措置、扶養の年齢・収入基準は公的資料と照合しています。




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