カスハラによる労災認定|セクハラと同じ127件に

更新日:6 日前
2026年10月9日、政府は「令和8年版 過労死等防止対策白書」を閣議決定しました。
厚生労働省が公表した2025年度の労災補償状況では、精神障害に関する労災請求件数は4,958件。前年度の3,780件から1,178件増加しました。支給決定件数も1,082件となっています。
精神障害の労災支給決定事案を、原因となった主な出来事別に見ると、上位は次のとおりです。
出来事 | 支給決定件数 |
上司等によるパワーハラスメント | 222件 |
顧客・取引先・施設利用者等からの著しい迷惑行為 | 127件 |
セクシュアルハラスメント | 127件 |
仕事内容・仕事量の大きな変化 | 113件 |
ここで注目したいのは、2番目の「顧客・取引先・施設利用者等からの著しい迷惑行為」、いわゆるカスタマーハラスメントです。
支給決定件数は127件で、セクシュアルハラスメントと同じ件数となっています。
この4項目を並べると、カスハラだけ少し見え方が違います。
パワハラ、セクハラ、仕事内容や仕事量の大きな変化は、直感的にも職場側の問題として捉えやすい。一方、カスハラは、原因となる行為そのものが顧客や取引先など社外の人物から生じるため、「問題があるのはカスハラを行った顧客側」と考えやすい面があります。
もちろん、迷惑行為そのものを行うのは顧客です。
しかし、従業員が業務としてその対応を続け、強い心理的負荷を受けて精神障害を発症すれば、労災として認定されることがあります。実際に2025年度には、カスハラを原因とする精神障害の労災支給決定が127件ありました。
つまり、原因となる行為をしたのが顧客であることと、事業主に労務管理上の問題がないことは別の話です。
2023年9月に改正された精神障害の労災認定基準では、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が、心理的負荷を評価する具体的出来事として明記されました。
そして2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント防止措置がすべての事業主に義務付けられています。
セクハラやパワハラに比べると、カスハラについての法整備は後から追いついてきた形です。
今回示された127件という数字は、カスハラも放置すれば従業員の精神障害につながり、労災として認定され得る問題であることを示しています。
カスハラは顧客側の行為から始まります。しかし、その影響を受けるのは業務として対応する従業員です。セクハラやパワハラと同様に、従業員の心身に重大な影響を与え得る労務管理上の問題として捉える必要があります。
参考資料・出典
1.厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書」
2026年10月9日公表。政府による白書の概要、過労死等の労災請求件数の増加要因分析等。
2.厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」
2026年7月15日公表。精神障害の労災請求件数4,958件、支給決定件数1,082件の出典。ハラスメント別の支給決定件数は、別添資料2「精神障害に関する事案の労災補償状況」表2-8を参照。




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