正社員とアルバイトの待遇差、説明できますか?同一労働同一賃金ガイドライン等の制度改正

更新日:3 日前
2026年10月1日、同一労働同一賃金ガイドライン等の改正が施行されました。
今回の改正では、賞与、退職手当、家族手当、住宅手当、無事故手当、病気休職・休暇、夏季冬季休暇、褒賞などについて、考え方や具体例が追加・充実されました。
2026年10月2日の厚生労働大臣記者会見でも、改正内容の周知・啓発に取り組むとともに、労働局と労基署の連携によって遵守徹底を図る方針が示されています。
こうした動きは、大企業だけの問題ではありません。
飲食店のように、正社員とパート・アルバイトが同じ店舗で働く職場でも、労働時間の管理や待遇の違いについて確認される可能性があります。
改正直後ということもあり、現場では重点的に確認が行われているとの声もあります。
正社員とアルバイトで待遇が違う。それ自体は問題ありません。
大切なのは、何のためにその待遇を設け、どのような基準で対象者や金額を決めているのかを、実際の業務内容や勤務実態に即して説明できることです。
今回は、個人経営や小規模な飲食店を想定して、具体的にどのような点が確認されるのかを考えます。
2026年10月1日、ガイドライン等が改正
今回の改正では、賞与や退職手当、各種手当、休暇、褒賞などについて、不合理な待遇差を判断する際の考え方や具体例が追加・充実されました。
さらに、パート・有期雇用労働者の雇入れ時・契約更新時には、待遇差の内容や理由等について説明を求めることができる旨を明示する必要があります。
これまで以上に、会社が設けている一つ一つの待遇について、その目的や支給基準を説明できることが重要になります。
同一労働同一賃金について、どんな質問が想定されるのか
ここからは、個人経営や小規模な飲食店を想定して考えてみます。
以下は、想定質問です。労基署の事実確認と労働局の報告徴収等で問題になり得る事項の一例です。
まず、雇用形態と仕事の内容
「正社員は何人いますか」
「パート・アルバイトは何人いますか」
「有期雇用契約の従業員はいますか」
「正社員とアルバイトの仕事内容は同じですか」
「正社員だけが行う仕事は何ですか」
「アルバイトの中にも、発注や売上管理を担当する人はいますか」
「アルバイトリーダーと正社員の責任はどう違いますか」
「お客様からのクレームには誰が対応しますか」
「金銭管理やレジ締めは誰が責任を持っていますか」
「シフト作成や従業員の教育は誰が行っていますか」
「他店舗への異動や配置転換はありますか」
同一労働同一賃金では、仕事内容だけでなく、責任の程度、配置変更の範囲なども重要です。
例えば、同じホールスタッフでも、接客だけを担当する人と、クレーム対応、売上管理、発注、シフト管理などを担当する人では、責任の内容が異なります。
一方、正社員とアルバイトが実際には同じ仕事をしていて、責任の違いもほとんどない場合には、待遇差の説明が難しくなることがあります。
ここで確認したいのは、正社員かアルバイトかという名称ではなく、実際にどのような仕事を担当し、どこまでの責任を負っているのかという点です。
次に、賃金や手当の違い
「正社員とアルバイトで基本給の決め方は違いますか」
「その違いは何を基準に決めていますか」
「賞与はありますか」
「賞与は何に対して支払うものですか」
「アルバイトには賞与を支給していますか」
「家族手当を正社員だけに支給している理由は何ですか」
「契約更新を繰り返しているパートにも家族手当を支給していますか」
「役職手当は、どのような業務や責任に対して支払っていますか」
「アルバイトの時間帯責任者にも役職手当はありますか」
「通勤手当は正社員とアルバイトで同じ基準ですか」
「勤務日数が異なる場合、支給額はどのように決めていますか」
「食事手当や食事補助はありますか」
「正社員とアルバイトで、まかないの負担額が違う理由は何ですか」
ここでは、金額の違いだけではなく、その待遇を設けている理由が確認の対象になります。
例えば、役職手当であれば、何の役職に対して支給しているのかではなく、その役職が担う業務や責任に対して支給しているのかを整理する必要があります。
家族手当であれば、何を目的とする手当なのか。賞与であれば、何に対する評価や報酬なのか。
同じ「賃金」であっても、それぞれの待遇には異なる目的があります。
その目的を明確にしたうえで、対象者や金額をどのような基準で決めているのかを説明できることが重要です。
さらに、休暇や福利厚生
「正社員には慶弔休暇がありますか」
「パート・アルバイトにも慶弔休暇を付与していますか」
「週5日勤務のパートと週2日勤務のパートでは、どのように扱っていますか」
「夏季休暇や冬季休暇はありますか」
「有期雇用労働者にも同じ休暇を認めていますか」
「病気休職制度はありますか」
「休憩室や更衣室、ロッカーの利用に差はありますか」
「正社員とアルバイトで、福利厚生施設の利用料金が異なることはありますか」
「有期契約を更新している場合、勤続年数はいつから数えていますか」
休暇や福利厚生についても、単に制度があるかどうかではなく、誰を対象とし、どのような条件で利用できるのかが重要になります。
例えば、勤務日数の違いをどのように扱っているのか、契約更新を繰り返している従業員の勤続年数をどう評価しているのかなど、実際の運用を確認しておく必要があります。
最後に、規程と説明の準備
「手当や休暇の支給条件は、どの規程に書いてありますか」
「実際の支給内容は規程どおりですか」
「アルバイトから待遇差について説明を求められたことはありますか」
「そのとき誰が、どのように説明しましたか」
「待遇差の理由を説明できる資料はありますか」
「労働条件通知書を見せてください」
「労働条件通知書に記載した内容と、実際の待遇は一致していますか」
日常の労務管理で決めていることを確認する質問が多いことが分かります。
しかし、これまで慣例で決めてきたことを文章にしていない場合があります。
例えば、店長手当は月3万円、正社員には賞与、アルバイトには賞与なし、といった取扱いです。
こうした制度について、なぜその金額なのか、何のための手当なのか、どのような条件を満たした人に支給するのかを整理しておく必要があります。
また、規程に記載されていても、実際の運用と異なっていれば、その規程だけで説明できるわけではありません。
制度として決めている内容と、実際の運用が一致していることも重要です。
そもそも「同一労働同一賃金」とは何か
法律は単純に同額支給を命じているわけではありません。
仕事の内容や責任、配置変更の範囲などに合理的な違いがある場合、待遇に差を設けることは可能です。
ただし、差があれば何でも認められるわけでもありません。
一つ一つの待遇について、その性質と支給目的を確認し、実態に照らして判断する必要があります。
例えば、基本給、賞与、役職手当、家族手当では、それぞれ支給する目的が異なります。
そのため、すべての待遇差を「正社員とアルバイトでは責任が違うから」という一つの理由だけで説明できるとは限りません。
待遇差の有無だけを見るのではなく、その待遇が何を目的として設けられているのかを確認することが重要です。
また、パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項では、パート・有期雇用労働者から説明を求められた場合、通常の労働者との待遇差の内容や理由などを説明する義務を定めています。
単に就業規則に書いてあるから、というだけでは、その違いが合理的であることの説明にはなりません。
2026年10月からは、説明を求められること自体も明示する
今回の改正で、パート・有期雇用労働者の雇入れ時や契約更新時に明示する事項が追加されました。
新たに必要となるのは、通常の労働者との待遇差の内容・理由等について説明を求めることができる旨です。
説明を求めることができる旨を知らせ、その後、実際に説明を求められた場合には、法に従って説明するという構造です。
雇入れ時・契約更新時の明示義務に違反した場合、過料の対象となることもあります。
従来から、待遇差について説明を求められた場合の説明義務はありました。
今回の改正によって、従業員がその説明を求めることができるという点も、雇入れ時や契約更新時に明確に伝える必要があります。
そのためにも、説明を求められてから理由を考えるのではなく、普段から待遇の目的や支給基準を整理しておくことが重要です。
質問の意図と自社の運用を照らし合わせる
同一労働同一賃金への対応は、単に待遇差をなくせばよいという話ではありません。
大切なのは、なぜその待遇差があるのかを、仕事内容や責任、配置変更の範囲、手当の目的などに照らして説明できることです。
特に飲食店では、正社員とアルバイトが同じ店舗で働きながら、それぞれ異なる役割を担っていることがあります。
アルバイトが時間帯責任者として発注や売上管理を担当することもあれば、正社員が接客業務を中心に担当している場合もあります。
重要なのは、雇用形態の名称だけで判断するのではなく、実際の仕事内容や責任を確認することです。
そして、それぞれの待遇が何を目的として設けられているのか、どのような基準に基づいて支給されているのかを整理します。
正社員とアルバイトで待遇が違う。それ自体は問題ありません。
問われるのは、その違いをどのように説明できるかです。
合理的に説明できる状態を整えることは、パート・アルバイト側の納得感を高めるだけでなく、正社員側にとっても、自分たちの待遇がどのような役割や責任に基づくものなのかを理解しやすくします。
今回挙げた質問を手掛かりに、規程の内容だけでなく、実際の業務分担や勤務実態と照らし合わせておくことが重要です。




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