top of page
検索

育児中の残業・深夜勤務の制限制度と就業規則のポイント|Q&A保存版②

執筆者の写真: N S
N S
9月1日
読了時間: 40分

noteで公開している記事を、こちらにも掲載しています。


所定外労働・時間外労働・深夜業の違いと、実務で迷いやすい点を整理する

2025年4月から、育児中の労働者が利用できる「所定外労働の制限(残業免除)」の対象が、3歳未満の子から小学校就学前の子まで拡大されました。

今回の改正は、対象年齢が広がっただけではありません。

育児中の労働者が請求できる制度には、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限の3つがあり、いずれも小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が対象です。

名称や対象年齢はよく似ていますが、制限される労働の範囲、対象外となる労働者、1回に請求できる期間、労使協定の取扱いは、制度ごとに異なります。

さらに、2025年10月からは、柔軟な働き方を実現するための措置に関する個別周知・意向確認の際に、この3制度についても案内することとされています。

この記事では、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限について、改正後の制度内容と、就業規則・労使協定・勤怠管理・シフト運用で迷いやすい点をQ&A形式で整理します。

なお、この記事は、3制度の違いと実務上の疑問にできるだけ答えられるよう、やや長めのQ&A形式で構成しています。

最初からすべてを読むというより、本文で全体像を確認しながら、知りたい制度や該当しそうなQ&Aを拾って読んでいただく形を想定しています。


1|所定外労働の制限(残業免除)


1-1.制度の内容

所定外労働の制限は、小学校就学前の子を養育する労働者から請求があった場合に、事業主が原則として所定労働時間を超えて働かせてはならない制度です。「残業免除」とも呼ばれます。

2025年4月の改正内容、「所定労働時間」の考え方、時間外労働の制限との違い、会社に制度の定めがない場合の取扱いを確認します。


Q 所定外労働の制限とは、どのような制度ですか。

所定労働時間を超える労働を、原則として免除する制度です。

小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて働かせることができません。


Q 2025年4月の改正で何が変わりましたか。

対象となる子の範囲が、3歳未満から小学校就学前までに拡大されました。

改正後は、子が3歳になった後も、小学校就学の始期に達するまで請求できます。

就業規則、育児・介護休業規程、申出書などに「3歳未満」と記載したままになっていないか、確認が必要です。


Q 「所定労働時間」とは何ですか。1日8時間以内なら所定外労働にはなりませんか。

所定労働時間とは、労働契約や勤務表などで、その労働者が働くことになっている時間です。

所定労働時間は、正社員、短時間勤務者、パートタイマーなど、労働者ごとに異なる場合があります。

所定外労働に当たるかは、原則として1日8時間を基準にするのではなく、その労働者について定められた所定労働時間を基準に判断します。

たとえば、次のようになります。

・所定労働時間が1日6時間の労働者が8時間働く場合 6時間を超える2時間が所定外労働

・勤務時間が午前9時から午後5時までの労働者が午後6時まで働く場合 午後5時から6時までの1時間が所定外労働

いずれも1日8時間を超えていない場合がありますが、所定外労働の制限を請求している期間は、原則として所定労働時間を超えて働かせることはできません。


Q 少しの残業であれば認めてもよいですか。時間外労働の制限とは何が違いますか。

会社が一方的に「少しならよい」と判断することはできません。

所定外労働の制限は、月何時間までという上限を設ける制度ではなく、所定労働時間を超える労働を原則として免除する制度です。

これに対し、時間外労働の制限は、法定時間外労働を完全に免除するものではなく、1か月24時間・1年150時間以内に抑える制度です。


Q 会社に制度の定めがなくても請求できますか。

法定の要件を満たす労働者は請求できます。

会社は、対象者、申出方法、申出先、請求期間などを就業規則や育児・介護休業規程に定め、労働者へ周知しておく必要があります。

あわせて、申出書、勤怠管理、シフト作成の運用も整えておきます。


1-2.対象となる労働者

所定外労働の制限は、正社員だけの制度ではありません。

小学校就学前の子を養育していれば、有期雇用労働者、契約社員、パートタイマー、アルバイトなども請求できます。

ただし、日々雇い入れられる労働者は対象外です。

また、勤続1年未満の労働者と、週の所定労働日数が2日以下の労働者は、労使協定がある場合に限り対象外とすることができます。

誰が対象となり、誰を労使協定によって除外できるのかを確認します。


Q 正社員以外や有期雇用労働者も請求できますか。

請求できます。

雇用形態だけを理由に対象外にはできません。

正社員のほか、有期雇用労働者、契約社員、パートタイマー、アルバイトなども対象になり得ます。

ただし、勤続1年未満または週の所定労働日数が2日以下に該当し、これらを対象外とする労使協定がある場合は、請求できないことがあります。


Q 日々雇い入れられる労働者は対象になりますか。

対象になりません。

ただし、「日給制で働いている」「契約期間が定められている」というだけで、直ちに日々雇い入れられる労働者に当たるわけではありません。

賃金の計算方法ではなく、雇用契約の内容を確認します。


Q 勤続1年未満、または週の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外ですか。

労使協定がある場合に限り、対象外とすることができます。

これらの要件に該当するだけで、自動的に対象外になるわけではありません。

就業規則に対象外と記載するだけでも足りず、所定外労働の制限について除外する旨を定めた労使協定が必要です。

週の所定労働日数は、ある週に実際に働いた日数ではなく、労働契約上の所定労働日数を基準にします。

シフトによって変動する場合は、契約内容や通常の勤務実態を踏まえて確認します。


Q 労使協定があれば、自動的に対象外になりますか。何を確認すればよいですか。

労使協定に、所定外労働の制限について対象外とする労働者が具体的に定められているかを確認します。

育児関係の労使協定を締結しているだけで、すべての制度に同じ除外が適用されるわけではありません。

次の点を照合します。

・所定外労働の制限についての除外規定があるか

・勤続1年未満、週2日以下のどちらを対象外としているか

・就業規則、申出書、労使協定の内容が一致しているか

・制度名や対象年齢が改正前のままになっていないか


Q 「子の看護等休暇」と同じ対象者として扱ってよいですか。

同じではありません。

制度ごとに除外要件を確認する必要があります。

子の看護等休暇では、2025年4月の改正により、継続雇用期間が6か月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みが廃止されました。

一方、所定外労働の制限では、勤続1年未満の労働者を労使協定により対象外とする仕組みが残っています。


1-3.請求できる期間・回数

所定外労働の制限は、1回につき1か月以上1年以内の期間で請求します。


Q 1回に請求できる期間と、申出期限はどうなっていますか。

1回につき1か月以上1年以内で、原則として開始予定日の1か月前までに請求します。

3か月、6か月、1年などの期間を指定できますが、小学校入学までの数年間を一度にまとめて請求することはできません。


Q 請求回数に制限はありますか。期間満了後は自動的に延長されますか。

請求回数に制限はありませんが、自動的には延長されません。

対象要件を満たしていれば、前の請求期間の終了後も再度請求できます。

継続して利用する場合は、次の開始予定日の1か月前までに改めて手続を行います。

会社側でも終了日を管理し、申出の空白期間が生じないよう案内する運用が考えられます。


1-4.請求の手続

所定外労働の制限を請求するときは、対象となる子や希望する期間など、所定の事項を事業主へ通知します。

通知事項、出生前や養子の場合の取扱い、申出方法、証明書類の要否を確認します。


Q 請求するときは、何を通知する必要がありますか。

次の事項を通知します。

・請求の年月日

・労働者の氏名

・子の氏名、生年月日および労働者との続柄

・制限期間の初日と末日

・子が養子である場合は、養子縁組の効力が生じた日

会社が申出書を作成する場合は、これらの事項を漏れなく記入できるようにします。


Q 子がまだ生まれていない場合や、特別養子縁組の場合はどうしますか。

出生前でも請求できます。

養子等の場合は、対象となる子との関係を確認できる事実を通知します。

出生前の場合は、子の氏名や生年月日に代えて、次の事項を通知します。

・出産する予定である者の氏名

・出産予定日

・出産予定者と労働者との続柄

特別養子縁組の成立に向けて子を監護している場合などは、その事実を明らかにします。

すでに養子縁組が成立している場合は、養子縁組の効力が生じた日も通知します。


Q 会社指定の申出書が必要ですか。口頭、メール、社内システムでも請求できますか。

必要事項を記録として確認できる方法で行うことが重要です。

実務上は、会社指定の申出書を用意すると分かりやすいですが、指定様式を使っていないことだけで直ちに請求を否定するのではなく、必要事項が通知されているかを確認します。

口頭相談だけで手続を完結させず、申出書や電子申請へつなげます。

事業主が認める場合は、FAX、電子メール、社内システム等も利用できる場合があります。

電子的な方法を認める場合は、申出内容、送信者、送信日を後から確認でき、書面として出力できる仕組みにします。


Q 会社は証明書類を求められますか。申出書や書類は誰が管理しますか。

子の出生等を確認するため、必要な範囲で証明書類を求めることができます。

会社が扶養手続などで必要な情報をすでに把握している場合もあるため、過剰な書類を求めたり、提出を理由に制度利用を不必要に遅らせたりしないようにします。

受付窓口、確認担当者、保管方法を定め、現場への共有は、適用期間や勤務上必要な事項にとどめます。

子に関する詳細な個人情報を必要以上に共有しないことも重要です。


1-5.会社が請求を拒める場合

労働者から請求があった場合、会社が拒めるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。

単に忙しい、人手が足りない、残業が必要というだけでは足りません。


Q 会社は所定外労働の制限の請求を拒めますか。

原則として拒めません。

ただし、制度を利用させると事業の正常な運営を妨げる場合には、例外的に拒めることがあります。


Q 「事業の正常な運営を妨げる場合」は、何を基準に判断しますか。

労働者が所属する事業所の具体的な状況を踏まえ、客観的に判断します。

主に、次の事情を総合して確認します。

・担当業務の内容

・業務の繁閑

・他の労働者による代行の可否

・代行者を配置する難しさ

・業務分担や勤務予定を変更できるか

・他部署や他店舗から応援できるか

会社全体が忙しいという抽象的な事情だけではなく、本人が勤務する店舗、営業所、事業場の状況を基準にします。

同時に、会社として可能な調整も検討します。


Q 人手不足、繁忙期、代行者がいない場合は拒めますか。

それだけで当然に拒めるわけではありません。

人員不足、繁忙の程度、代行者の確保の難しさは判断材料になります。

ただし、業務を分割できないか、担当を入れ替えられないか、勤務予定を変更できないか、他部署や他店舗から応援できないかなどを検討する必要があります。

通常考えられる調整をしても事業の正常な運営が困難となるかを、具体的に判断します。


Q 店長や直属の上司だけで拒否を決めてもよいですか。

個人の感覚だけで判断することは避ける必要があります。

実務上は、人事労務担当者などと連携し、検討した業務調整、代行の可能性、判断理由を記録しておきます。


1-6.制度が終了する場合

所定外労働の制限は、請求期間の満了前でも、一定の事由が生じると終了します。


Q 請求期間の途中でも制度が終了するのは、どのような場合ですか。

次のいずれかに該当すると、労働者の意思にかかわらず終了します。

・子を養育しないこととなった場合

・子が小学校就学の始期に達した場合

・産前・産後休業が始まった場合

・育児休業または産後パパ育休が始まった場合

・介護休業が始まった場合

休業から復帰した後に再び残業免除を希望するときは、新たな期間について改めて請求します。

会社が法定を上回る独自制度を設け、小学校就学後も利用を認めることは可能です。


Q 「子を養育しないこととなった場合」とは、どのような場合ですか。本人のけがや病気も含まれますか。

子との関係がなくなった場合や、労働者が子を養育できない状態となった場合です。

たとえば、次のような場合が含まれます。

・子が死亡した場合

・養子について離縁や養子縁組の取消しがあった場合

・子が他人の養子となったことなどにより同居しなくなった場合

・特別養子縁組が成立しなかった場合など

・労働者のけがや病気などにより、制限終了予定日まで子を養育できない状態となった場合

一時的な不在や短期間の体調不良だけで直ちに終了とせず、制度の前提となる養育状態が失われたかを確認します。


Q 終了事由が生じた場合、労働者は会社へ連絡する必要がありますか。開始前に生じた場合はどうなりますか。

子を養育しないこととなった場合は、労働者から会社へ通知する必要があります。

会社は、通知先や方法を定め、終了日を本人、所属長、勤怠担当者などへ必要な範囲で共有します。

制限開始前に終了事由が生じた場合は、請求はされなかったものとして扱われます。

終了事由が生じた日、通知を受けた日、予定していた制限期間を記録しておくとよいでしょう。


2|時間外労働の制限


2-1.制度の内容

時間外労働の制限は、小学校就学前の子を養育する労働者から請求があった場合に、法定時間外労働を1か月24時間・1年150時間以内に制限する制度です。

対象となる「時間外労働」の範囲、所定外労働の制限との違い、上限の考え方、会社に制度の定めがない場合の取扱いを確認します。


Q 時間外労働の制限とは、どのような制度ですか。

法定時間外労働を、1か月24時間・1年150時間以内に制限する制度です。

残業を完全に免除する制度ではありません。

法定時間外労働をさせる場合でも、1か月24時間・1年150時間を超えて働かせることはできません。


Q ここでいう「時間外労働」とは何ですか。所定外労働の制限とは何が違いますか。

ここでいう時間外労働とは、原則として1日8時間・1週40時間を超える法定時間外労働です。

所定外労働の制限は、労働者ごとに定められた所定労働時間を超える労働を、原則として免除する制度です。

たとえば、所定労働時間が1日7時間の労働者については、次のようになります。

・8時間働いた場合 7時間を超えた1時間は所定外労働ですが、通常は法定時間外労働には当たりません。

・9時間働いた場合 7時間を超えた2時間が所定外労働となり、そのうち8時間を超えた1時間が法定時間外労働になります。

日常的にはどちらも「残業」と呼ばれますが、法律上は異なる制度であり、対象となる労働時間も異なります。


Q 月24時間までは必ず残業を命じられますか。

命じられるわけではありません。

1か月24時間・1年150時間は、会社が当然に命じることのできる時間ではなく、制度上の上限です。

時間外労働を命じるためには、36協定の締結・届出や就業規則上の根拠など、通常どおりの要件を満たしている必要があります。

また、各月24時間以内であっても、請求期間中の累計が150時間を超えることはできません。


Q 会社に制度の定めがなくても請求できますか。

法定の要件を満たす労働者は請求できます。

会社は、就業規則や育児・介護休業規程に、対象者、申出方法、申出先、請求期間などを定めるとともに、申出書や勤怠管理の仕組みも整備しておくことが重要です。

2-2.36協定との関係

時間外労働の制限を請求した労働者に法定時間外労働をさせる場合も、36協定が必要です。

36協定などによる上限と、育児・介護休業法による上限が重なる場合の考え方を確認します。


Q 時間外労働の制限を請求した労働者にも、36協定は必要ですか。誰と締結しますか。

必要です。

時間外労働の制限は、36協定に代わる制度ではありません。

法定時間外労働をさせるためには、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と36協定を締結し、所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。

36協定がなければ、時間外労働の制限による上限以前に、法定時間外労働をさせることができません。


Q 36協定、就業規則、育児・介護休業法で上限が異なる場合、どれを適用しますか。

その労働者に適用される上限のうち、最も短いものを守ります。

たとえば、次のようになります。

・36協定の上限が月20時間の場合 月20時間を適用

・36協定の上限が月45時間の場合 制度利用者には月24時間を適用

労働契約や就業規則に、さらに短い上限が定められている場合も、その短い上限を守ります。


2-3.1年未満の期間で請求した場合の取扱い

時間外労働の制限は、1年未満の期間についても請求できます。

月24時間と累計150時間の管理方法、未使用時間の繰越し、勤怠管理で確認すべき事項を整理します。


Q 1年未満の期間でも、150時間の上限は適用されますか。何か月から実質的に問題になりますか。

適用されます。

請求期間内の法定時間外労働を、150時間以内に抑える必要があります。

6か月以下であれば、月24時間を毎月使っても、6か月で最大144時間となるため、150時間を超えません。

一方、7か月以上になると、月24時間を毎月使った場合の累計が150時間を超える可能性があります。

たとえば、7か月では最大168時間になります。

そのため、7か月以上の請求では、各月の上限だけでなく、請求開始日からの累計も継続して確認します。


Q ある月の未使用時間を翌月へ繰り越せますか。

繰り越せません。

ある月の法定時間外労働が10時間だったとしても、残りの14時間を翌月へ加え、翌月に38時間まで働かせることはできません。

月24時間は、各月に適用される独立した上限です。


Q 勤怠管理では、何を確認できるようにしますか。

各月の法定時間外労働と、請求期間中の累計時間を分けて管理します。

少なくとも、次の事項を確認できるようにします。

・制限の開始日と終了日

・各月の法定時間外労働

・請求開始日からの累計時間

・月24時間または累計150時間に近づいた場合の警告

通常の36協定上の管理だけでは、制度利用者ごとの請求期間に沿った累計を把握できないことがあります。

人事労務担当者と勤怠承認者のうち、誰が上限を確認するかも決めておきます。


2-4.対象となる労働者

時間外労働の制限は、小学校就学前の子を養育する労働者が対象で、雇用形態は問いません。

ただし、日々雇い入れられる労働者のほか、勤続1年未満の労働者と、週の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外です。

所定外労働の制限との違いも含めて確認します。


Q 正社員以外や有期雇用労働者も請求できますか。

請求できます。

雇用形態だけを理由に対象外にはできません。

ただし、勤続1年未満、週の所定労働日数が2日以下など、法律上の対象外要件に該当する場合は請求できません。


Q 日々雇い入れられる労働者は対象になりますか。

対象になりません。

日給制や有期雇用であることだけで判断せず、雇用契約の内容を確認します。


Q 勤続1年未満、または週の所定労働日数が2日以下の労働者は請求できますか。労使協定は必要ですか。

請求できません。

対象外とするための労使協定も不要です。

週の所定労働日数は、ある週に実際に働いた日数ではなく、労働契約上の所定労働日数を基準にします。

変動シフトの場合は、契約内容や通常の勤務の組み方を確認します。


Q 所定外労働の制限と同じ対象者として扱ってよいですか。

同じではありません。

所定外労働の制限では、勤続1年未満または週の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とするには、労使協定が必要です。

一方、時間外労働の制限では、これらの労働者は、労使協定の有無にかかわらず法律上の対象外です。


2-5.請求の手続

時間外労働の制限の請求期間・回数、通知事項、出生前や養子の場合の取扱い、申出方法、証明書類の要否を確認します。


Q 請求できる期間、回数、申出期限はどうなっていますか。

1回につき1か月以上1年以内で、請求回数に制限はありません。

原則として、開始予定日の1か月前までに請求します。

期間満了後も対象要件を満たしていれば再度請求できますが、自動的には延長されません。


Q 請求するときは、何を通知する必要がありますか。

次の事項を通知します。

・請求の年月日

・労働者の氏名

・子の氏名、生年月日および労働者との続柄

・制限を開始しようとする日

・制限を終了しようとする日

・子が養子である場合は、養子縁組の効力が生じた日


Q 子がまだ生まれていない場合や、特別養子縁組の場合はどうしますか。

出生前でも請求できます。

出生前の場合は、次の事項を通知します。

・出産する予定である者の氏名

・出産予定日

・出産予定者と労働者との続柄

特別養子縁組の成立に向けて子を監護している場合などは、その事実を明らかにします。


Q 書面以外でも請求できますか。口頭で相談を受けた場合はどうしますか。

書面によるのが基本ですが、会社が認める場合は、FAX、電子メール、社内申請システム等も利用できます。

電子的な方法は、送受信した情報を後から確認でき、書面として出力できるものにします。

口頭相談を受けた場合は、申出書や電子申請へつなげ、請求日、開始日、終了日などを正式に記録します。


Q 会社は証明書類を求められますか。

子の出生、生年月日、続柄などを確認するため、必要な範囲で求めることができます。

会社がすでに必要な情報を把握している場合には、過剰な提出を求めたり、提出を理由に制度利用を不必要に遅らせたりしないようにします。


2-6.会社が請求を拒める場合

時間外労働の制限についても、会社が拒めるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。

人手不足や繁忙期というだけで、当然に拒めるわけではありません。


Q 会社は時間外労働の制限の請求を拒めますか。

原則として拒めません。

ただし、制度を利用させると事業の正常な運営を妨げる場合には、例外的に拒めることがあります。


Q 拒否できるかは、どのように判断しますか。人手不足や繁忙期なら拒めますか。

労働者が所属する事業所の具体的な状況を基準に、担当業務、業務の繁閑、代行者の配置、勤務予定を変更できるかなどを総合して判断します。

人手不足や繁忙期というだけでは足りません。

業務分担の変更、他の労働者による代行、勤務予定の調整、他部署や他店舗からの応援などができないかを検討します。


Q 直属の上司や店長だけで拒否を決めてもよいですか。

個人の感覚だけで判断することは避けます。

人事労務担当者などと連携し、検討した対応や判断理由を記録しておきます。


2-7.制度が終了する場合

時間外労働の制限も、請求期間の途中で一定の事由が生じた場合には終了します。


Q 制度が終了するのは、どのような場合ですか。

次のいずれかに該当すると、労働者の意思にかかわらず終了します。

・子を養育しないこととなった場合

・子が小学校就学の始期に達した場合

・産前・産後休業が始まった場合

・育児休業または産後パパ育休が始まった場合

・介護休業が始まった場合


Q 「子を養育しないこととなった場合」や、開始前に終了事由が生じた場合はどう扱いますか。

基本的な考え方は、所定外労働の制限と同じです。

子の死亡、養子関係の終了、同居関係の解消、労働者のけがや病気により養育できない状態となった場合などが含まれます。

該当する事情が生じた場合は、労働者から会社へ通知してもらい、終了日を確認します。

制限開始前に終了事由が生じた場合は、請求はされなかったものとして扱います。


3|深夜業の制限


3-1.制度の内容


深夜業の制限は、小学校就学前の子を養育する労働者から請求があった場合に、事業主が原則として午後10時から午前5時までの間に働かせてはならない制度です。

「深夜」の具体的な範囲、他の制度との重なり、妊産婦の深夜業制限との関係、会社に制度の定めがない場合の取扱いを確認します。


Q 深夜業の制限とは、どのような制度ですか。

午後10時から午前5時までの労働を、原則として免除する制度です。

夜勤の回数を減らす制度ではなく、請求期間中の深夜業を原則としてさせない制度です。


Q 「深夜」とは何時から何時までですか。夜勤や残業の一部だけが深夜になる場合も対象ですか。

午後10時から午前5時までです。

その時間帯にかかる部分が対象になります。

会社が「夜勤」と呼ぶ勤務時間と、法律上の深夜業の範囲は必ずしも一致しません。

たとえば、次のようになります。

・午後8時から午前1時まで勤務する場合 午後10時から午前1時までが深夜業

・所定の終業時刻が午後9時で、午後11時まで残業する場合 午後9時から10時までは所定外労働、午後10時から11時までは深夜業

深夜業の制限を請求している労働者については、原則として午後10時になる前に業務を終了させます。


Q 所定の終業時刻が午後9時の場合、午後10時まで残業させることはできますか。

深夜業の制限だけを請求している場合、午後10時より前の労働は、この制度だけでは禁止されません。

ただし、その労働者が所定外労働の制限も請求している場合は、午後9時を超えて働かせること自体が原則としてできません。

どの制度を利用しているかを確認する必要があります。


Q 妊産婦の深夜業の制限にも該当する場合は、どちらの制度を利用しますか。

労働者が、いずれの制度に基づいて請求するかを選択できます。

育児・介護休業法に基づく深夜業の制限と、労働基準法に基づく妊産婦の深夜業の制限の両方に該当する場合、会社が一方を指定するのではなく、労働者の申出に基づいて取り扱います。

申出書や受付記録では、どの制度に基づく請求かを確認しておきます。


Q 会社に制度の定めがなくても請求できますか。

法定の要件を満たす労働者は請求できます。

会社は、対象者、請求期間、申出期限、申出方法などを就業規則や育児・介護休業規程に定めておく必要があります。

あわせて、勤務表の作成、申出情報の共有、午後10時を超える残業を防ぐ勤怠管理の仕組みも整えておきます。


3-2.対象外となる労働者

深夜業の制限は、小学校就学前の子を養育する労働者が請求できます。

正社員に限られず、有期雇用労働者、契約社員、パートタイマー、アルバイトなども対象になり得ます。

ただし、次のいずれかに該当する労働者は請求できません。

・日々雇い入れられる労働者

・勤続1年未満の労働者

・週の所定労働日数が2日以下の労働者

・深夜に子を常態として保育できる同居家族がいる労働者

・所定労働時間の全部が深夜にある労働者

各要件の具体的な判断基準を確認します。


Q 有期雇用労働者や日々雇い入れられる労働者は対象になりますか。

有期雇用労働者は対象になり得ますが、日々雇い入れられる労働者は対象外です。

契約期間が定められていることや、日給制であることだけで日々雇用と判断せず、雇用契約の内容を確認します。


Q 勤続1年未満、または週の所定労働日数が2日以下の労働者は請求できますか。

請求できません。

対象外とするための労使協定も不要です。

週の所定労働日数は、ある週に実際に働いた日数ではなく、労働契約上の所定労働日数を基準にします。

変動シフトの場合は、契約内容や通常の勤務実態を踏まえて判断します。


Q 同居家族がいれば、深夜業の制限は請求できませんか。

同居家族がいるだけで、直ちに対象外となるわけではありません。

対象外となるのは、深夜にその子を「常態として保育できる同居の家族」がいる場合です。


Q 「深夜に子を常態として保育できる同居の家族」とは、どのような人ですか。夜勤、病気、妊娠中の場合はどうなりますか。

16歳以上の同居家族で、深夜に継続して子を保育できる状態にある人です。

具体的には、次の要件をすべて満たす必要があります。

・16歳以上であること

・深夜に就業していないこと

・けがや病気などにより、子の保育が困難な状態ではないこと

・6週間以内に出産予定の者ではないこと。ただし、多胎妊娠の場合は14週間以内

・産後8週間を経過していない者ではないこと

深夜の就業日数が1か月に3日以下の場合は、「深夜に就業していない」として扱われます。

月4日以上深夜に働く場合は、この要件を満たしません。

同居家族がけがや病気で実際に子を保育できない場合や、上記の産前・産後期間に該当する場合も、常態として保育できる家族には当たりません。


Q 「所定労働時間の全部が深夜にある労働者」とは、どのような人ですか。

労働契約上の所定労働時間が、すべて午後10時から午前5時までの間にある労働者です。

たとえば、次のように判断します。

・午後8時から午前5時まで勤務する場合 午後8時から10時までが深夜ではないため、この対象外要件には該当しません。

・午後10時から午前5時まで勤務する場合 所定労働時間の全部が深夜にあるため、原則として請求できません。

「夜勤専従」という名称だけで判断せず、実際の所定労働時間を確認します。


3-3.請求できる期間・回数

深夜業の制限は、1回につき1か月以上6か月以内の期間について請求できます。

他の2制度との期間の違い、申出期限、期間満了後の取扱いを確認します。


Q 1回に請求できる期間、回数、申出期限はどうなっていますか。

1回につき1か月以上6か月以内で、請求回数に制限はありません。

原則として、開始予定日の1か月前までに請求します。

6か月を超えて引き続き利用するときは、次の期間について改めて請求します。

前の請求期間から自動的に延長されるわけではありません。


Q ほかの2制度と同じ期間で請求できますか。

必ずしも同じ期間にはなりません。

所定外労働と時間外労働の制限は1回につき最長1年ですが、深夜業の制限は最長6か月です。

複数の制度を同時に利用する場合は、それぞれの開始日と終了日を分けて管理します。


3-4.請求の手続

深夜業の制限を請求するときは、労働者や子の情報に加えて、深夜業の制限に特有の事項も通知する必要があります。

通知事項、申出書の記載、出生前や養子の場合の取扱い、申出方法、証明書類の要否を確認します。


Q 請求するときは、何を通知する必要がありますか。

次の事項を通知します。

・請求の年月日

・労働者の氏名

・子の氏名、生年月日および労働者との続柄

・制限を開始しようとする日

・制限を終了しようとする日

・子が養子である場合は、養子縁組の効力が生じた日

・深夜にその子を常態として保育できる同居の家族がいないこと

最後の項目は、所定外労働の制限と時間外労働の制限にはない、深夜業の制限に特有の通知事項です。


Q 同居家族がいる場合、申出書にはどのように記載しますか。

単に「同居家族がいない」と申告するのではなく、深夜に常態として保育できる家族がいないことを確認します。

同居家族がいても、年齢、深夜の就業状況、健康状態、妊娠・出産の状況によっては、対象外要件を満たさない場合があります。

会社指定の申出書には、深夜業の制限に特有の確認欄を設けます。


Q 子がまだ生まれていない場合や、特別養子縁組の場合はどうしますか。

出生前でも請求できます。

出生前の場合は、次の事項を通知します。

・出産する予定である者の氏名

・出産予定日

・出産予定者と労働者との続柄

特別養子縁組の成立に向けて子を監護している場合などは、その事実を明らかにします。


Q 書面以外でも請求できますか。会社指定の申出書を作る場合は何に注意しますか。

書面によるのが基本ですが、会社が認める場合は、FAX、電子メール、社内申請システム等も利用できます。

申出内容、送信者、送信日を後から確認でき、書面として出力できる方法にします。

3制度共通の申出書を使う場合は、どの制度を請求するかを選択できるようにし、深夜業の制限を選んだ場合に必要となる同居家族の確認欄を設けます。

口頭相談を受けた上司が手続を止めないよう、正式な受付窓口と申請方法も定めておきます。


Q 会社は証明書類を求められますか。

子の出生、生年月日、続柄などを確認するため、必要な範囲で求めることができます。

会社がすでに必要な情報を把握している場合は、制度利用に必要な範囲を超えて書類を求めたり、提出を理由に手続を遅らせたりしないようにします。

3-5.会社が請求を拒める場合

深夜業の制限についても、会社が拒めるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。

夜勤者不足や勤務表を組みにくいというだけで、当然に拒めるわけではありません。


Q 会社は深夜業の制限の請求を拒めますか。

原則として拒めません。

ただし、制度を利用させると事業の正常な運営を妨げる場合には、例外的に拒めることがあります。


Q 拒否できるかは、どのように判断しますか。

労働者が所属する事業所の具体的な状況を踏まえ、客観的に判断します。

担当業務、夜間の業務量、代行者の配置、勤務時間や業務分担を変更できるかなどを総合して確認します。


Q 夜勤者不足、勤務表を組みにくい、資格者が本人しかいない場合は拒めますか。

いずれも判断材料にはなりますが、それだけで当然に拒めるわけではありません。

次のような対応が可能かを検討します。

・他の労働者との勤務交替

・日勤など別の勤務帯への変更

・担当業務の見直し

・他部署、他店舗、他事業所からの応援

・資格者の育成や、別の資格者の配置

法令上必要な資格者が本人しかいない場合や、本人しか対応できない専門業務がある場合は重要な事情になります。

ただし、通常考えられる調整を検討したうえで、事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断します。


Q 店長やシフト管理者だけで拒否を決めてもよいですか。

個人の感覚だけで判断することは避けます。

人事労務担当者などと連携し、検討した勤務調整、代行の可能性、判断理由を記録しておきます。


3-6.制度が終了する場合

深夜業の制限も、請求期間の途中で一定の事由が生じると終了します。


Q 制度が終了するのは、どのような場合ですか。

次のいずれかに該当すると、労働者の意思にかかわらず終了します。

・子を養育しないこととなった場合

・子が小学校就学の始期に達した場合

・産前・産後休業が始まった場合

・育児休業または産後パパ育休が始まった場合

・介護休業が始まった場合

休業から復帰した後に再び利用するときは、新たな期間について改めて請求します。

会社が法定を上回る独自制度を設け、小学校就学後も深夜業を免除することは可能です。


Q 「子を養育しないこととなった場合」とは、どのような場合ですか。

制度の前提となる、子を養育している状態がなくなった場合です。

子の死亡、養子関係の終了、同居関係の解消、労働者のけがや病気によって養育できない状態となった場合などが含まれます。

一時的に家族へ世話を任せた場合など、短期間の事情だけで直ちに終了と判断しないようにします。


Q 終了事由が生じた場合、労働者は会社へ連絡する必要がありますか。開始前に生じた場合はどうなりますか。

子を養育しないこととなった場合は、労働者から会社へ通知する必要があります。

終了日を人事労務担当者、所属長、シフト管理者などへ必要な範囲で共有し、変更届、終了届、電子申請などで記録を残します。

制限開始前に終了事由が生じた場合は、請求はされなかったものとして扱います。


4|3制度に共通する事項


4-1.不利益取扱いの禁止

事業主は、労働者が所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限を申し出たことや、実際に利用したことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません。

不利益取扱いの具体例、人事評価や賞与での取扱い、シフトの削減や配置変更を行う場合の注意点を確認します。


Q 制度を申し出た労働者を解雇したり、有期契約を更新しなかったりできますか。

制度を申し出たことや利用したことを理由に、解雇や雇止めをすることはできません。

契約を更新しない場合も、その実質的な理由が制度の申出や利用にあるときは、不利益取扱いの問題が生じます。

解雇、雇止め、降格などを行う場合は、制度の利用とは別の客観的な理由があることを明確にしておく必要があります。


Q 不利益取扱いには、どのようなものがありますか。

解雇や雇止めのほか、降格、不利益な配置変更、昇進からの除外、評価や賞与における不利な取扱いなどが含まれます。

形式上は通常の人事異動や評価であっても、実質的に制度利用への制裁として行われていないかを確認します。


Q 残業や夜勤ができないことを理由に、人事評価や賞与を下げてもよいですか。

制度を利用したことだけを理由に不利に評価したり、賞与を減らしたりすることはできません。

残業時間や夜勤回数の多さをそのまま能力や勤務成績として評価すると、制度利用者が自動的に不利になるおそれがあります。

評価は、所定労働時間内の成果、担当業務の達成度、仕事の質など、実際の勤務内容に基づいて行います。

賞与に勤務実績や業績を反映すること自体が直ちに禁止されるわけではありませんが、「残業免除を利用した」「夜勤に入らなかった」という理由だけで減額することはできません。


Q 残業や深夜業をさせられないため、シフトを減らしたり、日勤部署へ異動させたりできますか。

勤務時間帯や担当業務を調整することはあり得ますが、本人の意思に反して不利益を与える取扱いには注意が必要です。

3制度は、労働契約上の勤務日数や所定労働時間を当然に減らす制度ではありません。

残業や夜勤を免除する代わりに勤務日数を減らし、賃金を低下させる取扱いは、不利益取扱いとなる可能性があります。

日勤部署への異動も一律に禁止されるものではありませんが、業務上の必要性、賃金、通勤、職位などへの影響を確認し、異動以外の対応がないかも検討します。


Q 店長が「制度を使うならシフトを減らす」と伝えてもよいですか。会社では何を確認すべきですか。

制度の利用を断念させるような発言や、不利益を示唆する伝え方は避けなければなりません。

会社では、評価、賃金、人事上の判断が制度利用によって歪まないよう、次の点を確認します。

・賃金規程、賞与規程、評価制度に、制度利用を理由とした減額や降格の余地がないか

・配置変更や契約更新の判断基準に、制度利用の有無が紛れ込んでいないか

・評価や配置を決定する前に、人事労務部門が内容を確認する手順があるか

現場におけるシフト調整の具体的な進め方は、4-4で確認します。


4-2.個別周知・意向確認制度との関係

2025年10月から、事業主は、3歳未満の子を養育する労働者に対し、子が3歳になるまでの適切な時期に、柔軟な働き方を実現するための措置を個別に周知し、利用意向を確認する必要があります。

このとき、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限についても案内します。

柔軟な働き方を実現するための措置そのものの詳しい内容は、次回の記事で扱います。

ここでは、周知する事項、実施時期、方法、意向確認の進め方を確認します。


Q 3つの労働時間制限も、個別周知の対象になりますか。

対象になります。

個別に周知する事項には、次の内容が含まれます。

・会社が設けた柔軟な働き方を実現するための措置の内容

・対象措置の申出先

・所定外労働の制限

・時間外労働の制限

・深夜業の制限

3つの労働時間制限は、子が3歳になった後も小学校就学前まで利用できるため、柔軟な働き方を実現するための措置とあわせて案内します。


Q 個別周知・意向確認は、いつ、誰に行いますか。

子が3歳になるまでの適切な時期に、対象となる労働者へ個別に行います。

具体的には、子が1歳11か月に達する日の翌々日から、2歳11か月に達する日の翌日までの1年間です。

日々雇用される労働者を除き、有期雇用であることだけを理由に対象外にはできません。

なお、3つの労働時間制限を実際に請求できるかどうかと、個別周知・意向確認の対象になるかどうかは、分けて判断します。


Q どのような方法で周知・意向確認を行いますか。

面談または書面の交付が基本です。

労働者が希望する場合は、FAXや電子メール等も利用できます。

面談はオンラインでも可能ですが、対面による面談と同程度の質を確保する必要があります。

音声だけの通話は、ここでいう面談には含まれません。

実施日、案内した内容、確認した意向を記録しておくと、周知漏れや認識の違いを防ぎやすくなります。


Q その場で制度を利用するか決めてもらう必要がありますか。

その場で利用の有無を確定してもらう必要はありません。

「利用する」「利用しない」だけでなく、「現時点では未定」という回答も利用意向に含まれます。

制度の利用を控えさせるような説明や、「利用しない」という回答へ誘導するような確認は避けなければなりません。


Q 法定の時期に一度確認すれば十分ですか。

法定の周知・意向確認に加えて、その後も必要に応じて状況を確認することが望ましいとされています。

家庭や仕事の状況は変化するため、育児休業からの復帰時、短時間勤務中、勤務方法の変更時などにも、必要に応じて面談等を行うことが考えられます。

また、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった場合には、育児休業や出生時育児休業に関する個別周知と、取得意向の確認が必要です。

さらに、2025年10月からは、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間など、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と、その意向への配慮も必要となりました。

これらは、子が3歳になる前に行う、柔軟な働き方を実現するための措置に関する個別周知・意向確認とは別の手続です。


4-3.管理職の取扱い(3制度共通)

所定外労働の制限と時間外労働の制限は、労働基準法上の管理監督者に該当する場合、原則として対象外となります。

一方、深夜業の制限は、管理監督者であっても、要件を満たせば請求できます。

役職名だけで判断できない理由、管理監督者の判断基準、社内の役職区分との関係を確認します。


Q 管理職は3制度を請求できませんか。

労働基準法上の管理監督者に該当する場合、所定外労働の制限と時間外労働の制限は原則として対象外ですが、深夜業の制限は請求できます。

管理監督者の適用除外は、労働時間、休憩、休日に関する規定に限られ、深夜業には及びません。

また、深夜業の制限における対象外要件にも、管理監督者は含まれていません。


Q 店長、課長、マネージャーなら管理監督者ですか。何を見て判断しますか。

役職名だけでは判断できません。

実際の職務、権限、勤務時間に関する裁量、待遇などを総合して判断します。

主に、次の点を確認します。

・経営者と一体的な立場にあるといえるか

・重要な業務上の判断を任されているか

・人事や業務運営について十分な権限があるか

・出退勤について相応の裁量があるか

・役職に見合った待遇を受けているか

一般の従業員と同じシフトで働き、勤務時間の裁量や業務上の権限がほとんどない場合は、肩書だけで管理監督者とは判断できません。


Q 会社が社内制度上「管理職」と定めていれば、申出を拒否できますか。

社内の役職区分だけを理由に拒否することはできません。

就業規則や人事制度上の管理職と、労働基準法上の管理監督者は必ずしも一致しません。

申出を受けた場合は、役職名ではなく実態を確認します。

また、深夜業の制限については、管理監督者であっても対象になり得る点に注意します。


4-4.業種別の実務への影響(3制度共通)

飲食業、小売業、宿泊業、医療・介護業、物流業、製造業など、シフト制、交代制、夜間営業を採用する職場では、3制度がそれぞれ異なる形で人員配置に影響します。

制度ごとの勤務管理、シフト調整の範囲、突発的な欠員への対応、現場管理者が準備すべき事項を確認します。


Q シフト制や夜勤のある職場では、3制度によって何が変わりますか。

制度ごとに、勤務管理のポイントが異なります。

・所定外労働の制限 所定の終業時刻までに実際に退勤できるよう、業務分担を調整します。

・時間外労働の制限 法定時間外労働を、1か月24時間・1年150時間以内に管理します。

・深夜業の制限 夜勤のローテーションから外し、日中勤務の残業も午後10時より前に終了させます。

飲食店では、ピーク時間、閉店作業、レジ締め、片付け、引継ぎなどが終業時刻を超えやすいため、シフト表に記載された時刻だけでなく、その時刻までに実際に退勤できる体制にします。

医療・介護、宿泊、物流、製造などでも、必要人数、資格者の配置、引継ぎ時間を踏まえ、対象者の残業や深夜勤務を前提としない勤務体制を整えます。


Q 対象者には繁忙時間を避けたシフトを組めばよいですか。

勤務時間帯を調整する方法の一つですが、勤務日数や所定労働時間を一方的に減らしてはいけません。

勤務時間帯や担当業務を調整することは考えられます。

ただし、制度利用を理由に、本人の希望や労働契約を無視してシフトを減らし、賃金を低下させることとは別の問題です。


Q 突発的な欠員や急な繁忙があれば、対象者に残業や深夜勤務を頼めますか。

欠員や来客の増加があったことだけで、当然に残業や深夜勤務を頼めるわけではありません。

まず、他の労働者による応援、業務分担の変更、管理者による対応などを検討します。

欠員対応を毎回制度利用者に依存している場合は、人員配置や運用そのものの見直しが必要です。


Q 店長やシフト管理者は、何を準備しておく必要がありますか。

対象者、利用している制度、適用期間を把握し、制度ごとの勤務管理を現場で実行できるようにします。

・対象者が利用している制度を一覧化する

・所定外労働の制限の対象者が、終業時刻までに退勤できる業務分担にする

・時間外労働の制限の対象者について、各月と請求期間中の累計時間を確認する

・深夜業の制限の対象者を夜勤のローテーションから外す

・欠員や繁忙時に、対象者以外で対応するための応援体制を決める

人事部門が申出を受理していても、店長やシフト管理者へ必要な情報が届いていなければ、現場で制度を実行できません。

申出内容のうち、現場へ共有すべき範囲は、後述の実務メモで整理します。


4-5.請求の撤回(3制度共通)

労働者から、請求期間の途中で請求を撤回したい旨の申出が行われることがあります。

会社では、撤回の申出を口頭だけで処理せず、対象となる制度、撤回の申出日、制限の終了日を確認し、勤怠管理やシフトへ確実に反映させることが重要です。


Q 労働者は、請求期間の途中で請求を撤回できますか。

請求期間の途中でも、労働者から請求の撤回を申し出ることができます。

撤回の申出があった場合は、対象となる制度と制限の終了日を確認し、会社の定める手続に沿って処理します。

就業規則や育児・介護休業規程には、請求を撤回する場合の申出方法、申出先、制限の終了日などを定めておくとよいでしょう。


Q 撤回の申出があったら、直ちに通常どおりの残業や深夜勤務を命じてもよいですか。

請求が撤回されたからといって、直ちに他の労働者と同じ水準の残業や深夜勤務を命じることができるとは限りません。

実際にどの程度の所定外労働、時間外労働または深夜勤務を命じることができるかは、労働契約、就業規則、業務上の必要性、36協定の範囲などを踏まえて判断します。

勤務表を変更する場合は、本人への説明や、直属の上司、シフト管理者、勤怠承認者への共有も必要です。


Q 撤回の手続は、どのように管理しますか。

撤回の申出日と制限の終了日が分かる形で記録に残します。

撤回届や電子申請などにより、少なくとも次の事項を確認できるようにします。

・労働者の氏名

・撤回する請求の種類

・撤回の申出日

・制限の終了日

・当初の請求期間

人事労務担当者だけでなく、直属の上司、シフト管理者、勤怠承認者にも、勤務管理に必要な範囲で制限の終了日を共有します。

実務メモ

制度を就業規則に定めるだけでは、実際の運用にはつながりません。

会社では、申出を受けてから勤務管理へ反映するまでの流れを、あらかじめ整えておく必要があります。

少なくとも、次の事項を確認しておきます。

・申出書、変更届、終了届などの様式

・子の出生や続柄を確認する証明書類の取扱い

・対象者、利用制度、開始日、終了日の管理

・所定外労働、法定時間外労働、深夜業を区別できる勤怠管理

・申出内容のうち、勤務管理に必要な範囲を現場へ共有する仕組み

評価や賃金への反映については4-1、シフト運用の具体的な準備については4-4もあわせて確認してください。

特に、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限は、対象者、請求期間、管理すべき労働時間が異なります。

3制度を一括して「育児中の残業制限」として扱うのではなく、どの制度が適用されているかを明確にしたうえで運用することが重要です。

また、2025年の法改正では、所定外労働の制限の対象拡大に加え、柔軟な働き方を実現するための措置や個別周知・意向確認制度も導入されています。

就業規則だけでなく、育児・介護休業規程、申出様式、勤怠システム、シフト管理、社内周知まで、一体的に見直しておく必要があります。


おわりに

3制度は、いずれも小学校就学前の子を養育する労働者が利用できる制度ですが、制限する労働の範囲、対象外となる労働者、請求できる期間は、それぞれ異なります。

・所定外労働の制限 所定労働時間を超える労働を、原則として免除する制度

・時間外労働の制限 法定時間外労働を、1か月24時間・1年150時間以内に制限する制度

・深夜業の制限 午後10時から午前5時までの勤務を、原則として免除する制度

申出を受けた会社は、まず、どの制度についての請求かを確認し、その制度の対象要件、適用期間、勤務管理の方法を整理する必要があります。

就業規則に規定するだけでなく、申出書、証明書類、勤怠管理、シフト作成、現場への情報共有までを一体的に運用できる形にしておくことが重要です。


ご相談やお問い合わせは、画面右下のチャットもしくはお問い合わせフォームからお気軽にお送りください。

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page